同じ英文を5回聞くと、だんだん耳なじみがよくなります。ところが文を隠して実際の場面に立つと、「知っているのに出てこない」と感じることがあります。
足りないのは、いつも入力回数とは限りません。画面の英文を認識する練習ばかりで、記憶から取り出す練習がない可能性があります。想起練習(retrieval practice)は、小さな手がかりから自分で表現を出し、そのあとにお手本を見て修正し、再び取り出します。
語彙研究が示したこと、示していないこと
Kang、Gollan、Pashlerは2013年、外国語の音声語彙について、聞いて真似する方法と、絵を見て先に単語を言おうとしてから音声を聞く方法を比較しました。直後と2日後のテストでは、想起したグループの語彙理解と産出が良く、発音の質も損なわれませんでした。
これは外国語彙の学習に関する証拠です。自由な長文会話のすべてが想起だけで上達すると証明したものではありません。ただ、実践への示唆は明確です。お手本をいつも自分の発話より先に出す必要はありません。先に試せば、どこを取り出せないかが見えます。
以下の短い機能表現への応用は、この原則から作る練習提案であって、実験が直接検証した効果ではありません。
5ステップで一つの表現を練習する
1. 手がかりだけ残す。「同僚に今日中の返事を求める」と日本語で書く、絵を使う、キーワードを3つ置くなどして、英文全文は隠します。 2. 目的を果たす英文を言う。簡単で、少しつまっても構いません。一語が出なければ、頭の中で翻訳を続けず、別の言い方で説明します。 3. お手本を読む、または聞く。同じ目的をどう達成しているか比較します。一字一句同じでなくても、正しく伝わる表現はあります。 4. 修正して、もう一度想起する。最初は見て言い、次は元の手がかりだけで言います。直した単語だけでなく、文全体を口に出します。 5. 少し後で場面を変える。同僚への依頼から、大家へ修理日時を尋ねる場面へ変えて、同じ機能を取り出します。
一度に20文の答えを読むより、実際に使う3文をこの順で仕上げるほうが、足りない所を見つけやすくなります。
手がかりは「伝えたいこと」から作る
日本語の意図なら実際の会話に近くなります。「そういう意味ではない」と伝えたい場面で先に話し、*That's not quite what I mean.*と比較します。英文の頭文字から暗記を再生するのではなく、意味から英語を呼び出す練習です。
絵や状況なら逐語訳を減らせます。スープに髪の毛が入っている絵を見て、店員に問題を説明します。*hair*という単語だけでなく、相手に状況が伝わる文が必要です。
キーワードは少し長い発話に使えます。*deadline / Friday / confirm*から、*Could you confirm by Friday whether you can meet the deadline?*のように組み立てます。最初は一文からで十分です。
想起・シャドーイング・間隔復習の役割分担
想起練習は「先に試して、後で答え」の順を作ります。シャドーイングは音声とリズムのモデルを提供します。間隔復習は、翌日・3日後・1週間後など、戻る時期を決めます。
組み合わせるなら、手がかりで話す→自然な表現を比較→音声で練習→文を隠して再び話す→翌日に別の場面で想起、です。三つの方法を競わせる必要はありません。
復習の間隔は練習した文を翌日忘れる理由で、音声モデルの使い方はシャドーイングの独学法で確認できます。
やりがちな4つの間違い
つまることを失敗とみなす。つまった所は、フィードバックが必要な場所を教えてくれます。修正後にもう一度出せるかを評価します。
答えを確かめず推測を繰り返す。分からなければ、信頼できるお手本を探します。誤った版を流暢にすることが目的ではありません。
文法の章名を手がかりにする。「丁寧に締め切り延長を頼む」は課題です。「仮定法の3課を復習する」は手がかりではなく学習項目です。
いつも同じカードでしか言わない。相手、時刻、場所を変えてみます。実際の会話は同じフラッシュカードの形では現れません。
ミラーセイは「最初に試す」のあとで使う
伝えたい意味から自分の英文をミラーセイに話し、自然な言い方と音声を確認してシャドーイングします。最後にテキストを隠して、もう一度話します。先に自分の試作があるから、何を直すべきかが具体的になります。
一語だけ出てこないときは、単語が出ないときの言い換えを使って会話を止めない練習も役立ちます。
参考資料
- Kang, S. H. K., Gollan, T. H., & Pashler, H. (2013). Don't just repeat after me: Retrieval practice is better than imitation for foreign vocabulary learning. *Psychonomic Bulletin & Review*, 20, 1259–1265. 論文ページ
*ミラーセイ(MirrorSay)は、話したい英文を自然な言い方に映し、音声でシャドーイングできる無料のAI英会話練習アプリです。登録不要、音声は可能な限り端末内で処理します。*
